公的年金がGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による日本株式の運用により大きな損失になっていることが最近話題となりました。私たちの保険料や税金で賄われている公的年金が勝手に運用され、結果が思わしくないことに対して不満の声が上がっています。これは年金積立金による日本株の購入はアベノミクスの株高を支える一因とも言われ、私たちの年金が政策的に運用されているのです。しかし、運用が失敗してもしも年金の受取額が減ってしまった場合でも、政府は責任をとってくれません。使われるのは私たち保険料や税金なのです。そんな公的年金が不透明な今、自分たちで年金を用意しておくことは必要不可欠です。
知らないと損する年金の知識
国民年金のみに加入している人は現在65歳からの受給です。厚生年金は段階的に移行していて、男性は2025年から、女性は2030年から完全に65歳からの受給となります。企業によっては企業年金と言われる上乗せ部分が用意されています。しかし、一般的に大企業にしかない上、この企業年金はさらにその数が減ってきています。
どうしても年金を早く受給しないと生活できない人には繰上げ受給という方法があります。ただし、0.5%x繰上げた月数という減額率が本来支給される年金額に乗じられるため、生涯に渡って受給する年金の額が減額されてしまいます。年金の損益分岐点は大体76歳と言われています。このような仕組みを使うことなく、年金を60歳から受取れるように準備しておく方法はないでしょうか?
確定拠出年金(DC)とは
年金の新しい形として、近年注目されているのが確定拠出年金(DC)です。従来の企業年金では確定給付型といわれ、将来の年金額が約束されていました。しかしこの確定給付型の年金は想定通りに運用できない場合には約束通りの年金給付をするために企業側が保険料を増額しなければなりませんでした。このため多くの企業が負担の増加に耐え切れなくなりました。
そこで、確定拠出と言われる新しいタイプの年金が取り入れられるようになったのです。この確定拠出型では将来の年金額は運用結果に応じて決まります。支払う保険料を設定しておくため、確定拠出という名前になっているのです。この確定拠出年金は企業型と個人型があり、企業だけでなく個人でも入ることができます。つまり、厚生年金に入っていない国民年金第一号被保険者や企業年金制度が会社にない人もこの制度を利用できるのです。ただし、現在は従来型の確定給付型企業年金のある会社員や会社員に扶養されている配偶者には、加入が認められていません。2017年4月からは加入が認められる予定です。
確定拠出年金(DC)の特徴
1.自分で選択する金融商品で運用(預金・保険・投資信託)
2.支給期間は原則60歳から終身または5年以上
3.保険料の上限設定 企業型・個人型で異なる
4.税制上の優遇措置 所得控除あり
確定給付年金では個人が運用する商品を選びます。預金や保険、公社債投資信託や株式投資信託などその種類は様々で自分の判断で選ぶことができる反面、リスク商品の場合は運用成績が悪いと将来の年金額が減ってしまいます。そして受給期間は原則60歳以降で一時金や年金といった受取り型を選ぶことも可能です。この確定拠出年金のデメリットとしては受取が60歳以降なので、お金が急に必要になっても預金のようには引き出すことができません。そのため、確実に年金として使える範囲で保険料を設定します。
確定拠出年金の上限額
1.企業型(他の年金制度なし)・・・年間66万円(月額55,000円)
2.企業型(他の年金制度併用)・・・年間33万円(月額27,500円)
3.マッチング拠出(規約で可能な場合)・・・企業拠出の半額まで
4.個人型(会社員企業年金制度なし)・・・年間27.6万円(月額23,000円)
5.個人型(自営業など)・・・年間81.6万円(月額68,000円)
保険料は上限があり、企業型の確定拠出年金と個人型の確定拠出年金で異なります。企業型の場合は基本的に企業が毎月保険料を出してくれるので、その範囲で個人が運用することもできます。確定拠出企業年金以外の年金制度がない場合には企業が最大で年間66万円の掛金を拠出することができます。また、他に確定給付型の企業年金など他の年金もある場合には年間33万円の掛金を企業が拠出できます。
しかし実際には勤続年数などで企業の拠出金が決まりますので上限まで掛金が拠出されていないこともあります。その場合、年金額は思っているほど多くはないかもしれません。その場合、マッチング拠出という方法で個人が企業型確定拠出年金に上乗せ自分で掛金を上乗せすることが可能です。マッチング拠出の上限は企業の拠出金の半分までとされています。
そして、企業年金がない人が加入できる個人型の確定拠出年金では上限が年間27万6千円です。自営業などの場合には年間81万6千円まで拠出できます。個人型の大きなメリットは、税制上の優遇で先ほどのマッチング拠出の部分もこれが適用されることです。つまり支払った掛金をすべて所得から差し引くことができるのです。所得税や住民税などの税金が少なくなるように所得の額を抑える効果があります。運用中も投資信託などで運用した場合の売買で儲けた利益は非課税となります。さらに受け取る場面でも、一時金なら退職所得控除が適用されるので、一定額までは非課税です。年金のための運用を個人でする場合にこれほど税制上優遇されている制度はありません。少しでも余裕がある人はこの制度使うべきだといえます。
年金は自分で選ぶ時代
このような特徴のある確定拠出年金ですが、実際にどの金融商品で運用すればいいのか決めることが必要です。確定拠出年金は選べる金融商品が限られていますので、その中から自分の好きなものを組み合せることができます。年金額を絶対に減らしたくない人にとってはリスクのない金融商品である預金や保険がいいかもしれません。一方、多少のリスクを覚悟すれば、株式投資信託で運用するとリターンが大きく将来の年金額を増やせる可能性があります。
投資信託の場合は長期に保有することになるので、できるだけ手数料の安いものを選びます。他にも資産運用をしている場合はその一部として捉えることが重要です。金融商品が口座内で預け替えやリバランスができますが、手続きには時間がかかります。
まとめ
自分の年金形成をしていくなら、確定拠出年金は優れた制度です。
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